フランス南西部からスペイン北部にまたがる
緑と水のゆたかな土地をバスク地方と言います。

ここはピレネー山脈北西麓の標高2,000m以下の
丘陵地帯を占め、気候は温暖な西岸海洋性気候のため、
牧羊や酪農、農業が盛んな地域です。

このバスク地方のフランス側を「ペイ・バスク」と言います。
私は、フランスでの修業の際にここへは
どうしても訪れたかったのです。

この地でお世話になったのは1997年の夏の終わりから
晩秋の頃でしたので過ごしやすい時期で、
バスクにある総菜屋で3ヶ月の間お菓子作りに励みました。

バスク地方の街並みは日本とはまったく違い外界から隔離された
童話の国にでもでてくるような静かなたたずまいの街です。
ここでは歴史に培われた伝統的なお菓子も多く、
それが本当に美味しかったのを覚えています。
特に惣菜屋で働いた時に様々なお菓子や料理に触れることができて
感激の毎日を送ることができました。
フランスのパリなどの都会的な華やかなお菓子と比べるとシンプルですが、
素朴で深い味わいのあるものが多く、ひとくくりにフランス菓子を語ることはできません。
同じフランスでも地方によって歴史に彩られたお菓子がたくさんあります。
そのお菓子に出会えた事、この国で修業できた事をとても嬉しく思っています。
 
 
 
 

バスク地方のお菓子の中で、とても印象的なお菓子がガトーピレネーです。
このお菓子は写真にもあるように暖炉で焼くバームクーヘンのようなものです。
生地は小麦粉、砂糖、バター、卵を同量使って作ります。
家庭の暖炉に円錐形の型をつけた棒をかざして、少しずつ生地をつけて、回しながら焼きます。
このお菓子の由来については、ピレネーの山奥の羊飼いの家に住みついた女性が、ジャガイモのピュレでこのお菓子の前身を作っていたと言われています。
 
 
 
フランスの風景の紹介も今回で最後です。
このフランス紀行では、紹介しきれないほど多くの風景に出会いました。その中でもサクレ・クール寺院、凱旋門、モンサンミッシェルには、とても感動しましたので最後に当たり紹介させていただきます。
 
 


パリからレンヌまでTGV(高速鉄道)で2時間、レンヌからバスで1時間半、乗り換えも入れるとおよそ4時間かけてモンサンミシェルに到着します。
13世紀に立てられたこの修道院は当時の姿のままです。
まるで島全が中世の城のような感じです。
かつては潮の満ち引きで島全体が完全に海に囲まれたそうですが、現在は砂地が全て隠れるほどは潮が満ちなくなったらしいとの事。
両脇にみやげ物屋に囲まれた急な参道を登りながら修道院へ着くと、修道院の建物に足を踏み入れてもなお階段がずっと続いています。
息を切らしてたどりついた頂上からの景色は息をのむほど美しかったのを鮮明に覚えています。

 
 
1996年の6月から翌年の11月までのフランス修業は、バスク地方を最後に終えることとなりました。
この1年半フランスの各地を訪ね歩きましたが、やはり「ペイ・バスク」という街が一番印象深いものとなりました。
実際に行ってみると雄大な自然と素朴な町並み、伝統菓子の美味しさ、人々の大らかな人間性など、全てに感動と感激と感謝の毎日でした。
私は、この気持ちを忘れることなく自分のお菓子作りの原点にしたいという想いで自分の店の名前を「ペイ・バスク」としました。

私が感じた「ペイ・バスク」の空気を私流に解釈し作り上げたお菓子の数々を地域の皆さまに召し上がっていただきたいという想いを込めながら、この大野城市若草の地でこれからも末永くお菓子を作ってまいります。

2009年の6月から連載してきた「フランス紀行」は、今回をもって終了です。
訪れた多くの土地の思い出やフランスで出会いお世話になった方々との交流などお話したいことは、まだたくさんありますが、別の機会に紹介させていただきたいと思っています。

2010年12月1日
フランス菓子ペイ・バスクオーナーシェフ
廣瀬 義幸


おわり
   
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